あいみょん『ハルノヒ』なぜ北千住?野原ひろしプロポーズの真相を追う
『ハルノヒ』を聴いた人が最初に抱く最大の疑問、それは「なぜ春日部駅ではなく、北千住駅なのか」という点に集約されます。埼玉県春日部市は野原一家が暮らす本拠地であり、アニメファンにとっての絶対的な聖地です。しかし、あいみょんが目を向けたのは、野原一家が誕生するさらに前、「野原ひろしとみさえの人生が交差した瞬間」でした。
公式設定および原作コミックス第1巻の初期エピソードにおいて、ひろしがみさえに結婚を申し込んだ場所こそが、まさに「北千住駅のプラットホーム」です。当時、秋田県から上京して双葉商事に勤めるサラリーマンだったひろしと、熊本県から上京して働いていたみさえ。地方出身の二人が出会い、恋に落ち、生涯を共に歩む決意を固めた舞台こそが、北千住でした。
2019年4月に公開された『映画クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーン 〜失われたひろし〜』の主題歌オファーを受けた際、制作陣からのオーダーは「野原一家の家族愛を描いてほしい」というものでした。熱烈なしんちゃんファンを公言していたあいみょんは、単に現在の仲睦まじい家族風景を描くだけでは満足しませんでした。彼女は監督やプロデューサーとの打ち合わせ、そして原作を徹底的に読み返した末に、「家族のすべての始まりであるプロポーズの場所から物語を始めたい」という直感に至ったのです。
当時の音楽メディアのインタビューや特番において、あいみょんは「ひろしがみさえにプロポーズしたのが北千住駅のホームだったというエピソードを知ったとき、鳥肌が立った」「ここから歌を始めるしかないと思った」と述懐しています。つまり、北千住という地名は突飛なインスピレーションではなく、原作への深いリスペクトと緻密な考証から導き出された必然の舞台設定でした。