バサロ泳法の真実と15M制限の謎!鈴木大地の快挙から最新技術まで
ソウル五輪直後、国際競泳界には激震が走りました。「背泳ぎなのに、競技時間の半分近く選手が水中に潜って姿が見えないのは競技として異常ではないか」という議論が巻き起こったのです。ネット上などでは「バサロ泳法が禁止された」と単純化して語られるケースが散見されますが、正確には「完全禁止」ではなく「潜水距離の制限」というルール改正が行われました。
国際水泳連盟(FINA/現World Aquatics)は、1988年ソウル五輪後の総会で議論を重ね、1989年にまず「潜水は10メートルまで」とする暫定ルールを導入。その後、1991年の世界水泳選手権を前に現在の基準である「スタートおよびターン後、15メートル地点までに頭の一部が水面に出ていなければならない」という正式ルールを策定しました。この改定に至った背景には、主に以下の3つの構造的理由が存在します。
第一に、選手の生命を守る安全面の配慮(ブラックアウトの防止)です。潜水距離の延長競争が過熱すれば、選手が水中で極度の酸欠状態に陥り、意識を失う浅水浮上性ブラックアウト(シャローウォーター・ブラックアウト)を引き起こす危険性がありました。過度な我慢比べによる事故を未然に防ぐことが最大の命題でした。
第二に、水泳競技の本質とアイデンティティの維持です。水泳(競泳)は水面を泳ぐ技術を競うスポーツであり、レースの大半を潜水したまま進むのであれば「競泳ではなく潜水競技(フィンスイミング等)になってしまう」という批判が競技連盟内から強く上がりました。
第三に、商業化とテレビ放映権におけるエンターテインメント性です。1980年代後半以降、五輪競技の放映権ビジネスが巨大化する中で、「誰が先頭を泳いでいるのか水面から見えない」「観客席から水しぶきや表情が見えず盛り上がりに欠ける」というメディアサイドからの要請もルール改正を強力に後押ししました。