「地上の楽園」と呼ばれた北朝鮮の真相|9万人を騙した帰国事業の実態と現在
命がけで北朝鮮を脱出し、日本への生還を果たした脱北者たちによる司法闘争は、いま決定的な局面を迎えています。
2018年、脱北者の川崎栄子さんら5人の原告は、「『地上の楽園』という虚偽宣伝によって北朝鮮へ渡航させられ、長年にわたり出国を阻止されて人生を奪われた」として、北朝鮮政府を相手取り総額5億円の損害賠償を求める訴訟を東京地方裁判所に起こしました。
2022年3月の一審判決は、北朝鮮側の勧誘行為における違法性を認めつつも、不法行為から20年が経過したことで権利が消滅する「除斥期間」の壁を理由に請求を棄却しました。しかし、原告側は諦めずに控訴。2023年10月、東京高等裁判所は歴史的な大転換となる判決を下しました。
「原告らが北朝鮮を脱出するまで、継続的な人身の拘束と権利侵害が続いていた」と認定し、除斥期間の適用を退けて一審判決を取り消し、審理を東京地裁に差し戻したのです。主権免除の原則(外国国家は他国の裁判権に服さないという慣習国際法)を破り、北朝鮮の重大な人権侵害に対する裁判権を認めたこの判断は、国際法上も極めて画期的な先例となりました。
2024年から2026年にかけて差し戻し審での実質審理が続いており、原告側の高齢化が進む中、日本法廷における実質的な損害賠償命令の確定と、国連人権理事会をはじめとする国際社会への問題提起が加速しています。