俳優でんでんの現在と若い頃の軌跡|怪演の原点と噂の真相
でんでんの俳優人生における最大の転換点であり、日本映画界に衝撃を与えたのが、2011年公開の園子温監督作品『冷たい熱帯魚』です。実際の猟奇殺人事件をモチーフにした本作で、でんでんは表向きは陽気で人当たりの良い熱帯魚店店主でありながら、裏では残虐非道な殺人を繰り返す凶悪犯・村田幸雄役を演じました。
特筆すべきは、単なる怪物としての恐怖ではなく、「どこにでもいそうな親しみやすいおじさん」の仮面を被ったまま繰り出される狂気です。機関銃のようにまくし立てる陽気な関西弁、相手の心理的境界線をやすやすと侵食していくマニピュレーターとしての振る舞い、そして突如として訪れる凄惨な暴力。この「日常と狂気のシームレスな融合」こそが、観客の精神を激しく揺さぶりました。
この圧倒的な怪演は国内外で絶賛され、第35回日本アカデミー賞最優秀助演男優賞をはじめ、ブルーリボン賞助演男優賞、キネマ旬報ベスト・テン助演男優賞、報知映画賞など、国内主要映画賞の助演男優賞を総なめにする快挙(助演男優賞6冠)を達成しました。
後に当時のインタビュー等で語られた証言によると、園子温監督からの過酷な要求に応えるため、撮影期間中は私生活のメンタルバランスを極限まで追い込みながら役と同化していたといいます。「悪人を悪人として演じるのではなく、本人にとってはそれが絶対的な日常であるように演じる」というでんでん独自のリアリズムが、あの歴史的怪演を生み出しました。