都はるみ『千年の古都』誕生の真相|歌詞に隠された京都への深い想いと現在
『千年の古都』は、1990年(平成2年)8月21日に日本コロムビアより発売された都はるみの通算109枚目のシングルです。この楽曲は単なる新曲リリースではなく、1984年の「NHK紅白歌合戦」を最後にマイクを置いた国民的歌手が、満を持して本業へと帰還した象徴的な復帰作でした。
本作の企画段階において、テーマとして選ばれたのが都はるみ(本名:北村春美)の生誕地である「京都」でした。1994年に控えていた「平安建都1200年」を見据えつつ、京都という悠久の歴史を持つ土地の重厚さと、一度全てを手放して立ち止まった彼女自身の人生の陰影を重ね合わせる意図がありました。
制作陣には、昭和から平成の歌謡界を牽引した最高峰の布陣が集結しました。作詞を手掛けた吉岡治は『さざんかの宿』や『天城越え』で知られる情念描写の名手であり、作曲を担当した弦哲也は哀愁と格調高さを併せ持つ旋律の匠です。吉岡は都はるみの復帰にあたり、従来の演歌の定型であった「酒場」や「北国の情念」から脱却し、千年の時が流れる古都の風景美と、人間の普遍的な孤独を融合させた壮大なスケールの詞を書き下ろしました。
弦哲也によるメロディは、尺八や和楽器の響きを取り入れながらも、フルオーケストラのダイナミックなアンサンブルを採用。都はるみ特有の「うなり」や「こぶし」をあえて抑制し、低音から高音へと突き抜ける伸びやかなベルカント唱法を随所に活かすことで、演歌というジャンルを超越した「和製シンフォニック・バラード」を完成させたのです。