競走馬は本当に馬刺しになるのか?引退後の過酷な行方と屠殺の真実
一般消費者が飲食店や精肉店で目にする馬刺しのほとんどは、競走馬のサラブレッドではありません。馬刺しの名産地として知られる熊本をはじめとする市場で扱われているのは、全く別のルーツを持つ馬たちです。
農林水産省の畜産統計や馬肉生産団体の公表データによると、国内で流通する高級馬刺しの原料となっているのは主に「重種馬(じゅうしゅば)」と呼ばれる大型の品種です。ペルシュロン種、ブルトン種、ベルジャン種、あるいはそれらを掛け合わせた「日本輓切種(にほんばんせきしゅ)」などが該当し、体重はサラブレッドの2倍近い800キログラムから1トンを超えます。
また、ここで見過ごせないのが「ばんえい競馬と馬肉の経緯」です。北海道帯広市で開催されているばんえい競馬は、サラブレッドではなくこうした重種馬が鉄ソリを曳いて競い合います。歴史的にばんえい競馬は北海道の開拓を支えた農用馬の資質向上と馬産振興を目的に発展した経緯があり、競走を引退した重種馬はそのまま食肉市場での評価が高く、計画的に肥育農家へと引き渡されるサプライチェーンが確立されています。
食肉用重種馬と競走馬の違いを整理すると、サラブレッドが食用に転換される場合でも、そのまま「霜降り馬刺し」として料亭に出てくるわけではありません。数ヶ月間にわたり配合飼料を与えて脂肪を乗せる「再肥育」が行われた後に加工肉や廉価な赤身肉として出荷されるか、コンビーフの原料、ソーセージなどの畜肉加工品、あるいはドッグフードなどのペット用飼料として利用されるのが一般的なサプライチェーンの姿です。