中国の反日映画はなぜ作られるのか?トンデモ描写と規制の裏側
「中国の人々は反日作品を見て反日感情を高めているのか」という疑問に対し、中国の大手レビューサイト「豆瓣(Douban)」やSNS「微博(Weibo)」の反応を検証すると、外側から見るイメージとは大きく異なる世論が浮かび上がります。
現在の中国の若者層において、陳腐な抗日神劇は愛国心を刺激する対象ではなく、もっぱら「失笑を誘うネタ(智商税=バカさの象徴)」として消費されています。動画共有サイト「Bilibili(ビリビリ)」では、物理法則を無視したトンデモ戦闘シーンを切り抜いてツッコミを入れるMAD動画が数百万回再生されるなど、完全にコメディコンテンツとして扱われてきました。
一方で、作家性の高い作品に対しては非常に鋭い批評眼が向けられます。チアン・ウェン(姜文)監督が手がけた名作映画『鬼が来た!』(鬼子来了)は、日本兵と中国農民の滑稽かつ残酷な関係性をリアルに描き、カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞しました。しかし、中国当局からは「農民の愚鈍さを描き愛国精神に反する」として国内上映禁止処分を受けました。それにもかかわらず、ネット上の映画愛好家の間では「中国映画史上屈指の大傑作」として今なお極めて高い評価を維持しています。
また、南京事件をテーマに中国軍人だけでなく日本人兵士の苦悩と精神の崩壊を描いたルー・チュアン(陸川)監督の『南京!南京!』では、公開当時に「日本兵を美化している」「敵を人間的に描きすぎている」と過激なネットユーザーから激しいバッシングを浴びる論争が起きました。このように、公式見解と民間の受け止め方の間には常に深い葛藤と温度差が存在しています。