なぜ平面的に見える?貝殻イラストを劇的に立体化するプロの描き方完全版
デザインの現場において、貝殻イラストの採用をめぐりどのようなトラブルや課題が起きているのでしょうか。現役のグラフィックデザイナー、Webディレクター、広報担当者らへの独自ヒアリングおよびSNS上の投稿ログから、生々しい現場の声を検証しました。
都内の制作会社に勤務する30代のチーフデザイナーは、次のように打ち明けます。
「新人のデザイナーが作ったサマーセールのバナーを見たとき、何か違和感がありました。よく見ると、無料素材サイトから引っ張ってきたホタテのイラストをそのまま貼り付けただけで、影の向きが太陽光の光線方向と逆になっていたんです。貝殻は曲面が多いモチーフなので、光源の位置が1箇所でも狂うと、脳が直感的に『作り物っぽさ』を察知してしまいます。素材を合成するときは、全体の光源設計を統一する基本を疎かにしてはいけません」
また、知恵袋やコミュニティ掲示板では、自作イラストに関する切実な相談が散見されます。
「『夏祭りのチラシ用に手書きで巻貝を描いたが、サザエというよりヤドカリの宿に見える』『筋を等間隔で描いたら、貝殻ではなくマドレーヌのお菓子に見えてクライアントから突っ返された』といった失敗談は日常茶飯事です。均一すぎる機械的な線は、生物由来の美しさを損なう最大の罠です」
人間が貝殻を「美しい」「リアルだ」と認識する視覚メカニズムには、わずかな不規則性(ゆらぎ)が関係しています。波に洗われて削れたエッジや、貝殻の層が重なるわずかな段差。プロが手がける貝殻イラスト手書きには、意図的に微細な歪みやインク溜まりが仕込まれており、それが観察者の共感と温かみを引き出しているのです。