『僕たちは天使だった』はなぜ過去形か?歌詞と最終回に秘めた真相
曲の冒頭、荘厳なコーラス「Angel...」に続いて歌われる「時に埋もれた 記憶の彼方 そうさ僕達は 天使だった」という印象的なフレーズ。なぜ現在進行形ではなく「天使だった」と過去の事実として歌われているのか。この疑問に対する答えは、名作詞家・森雪之丞氏が歌詞全体に忍ばせた重層的なメタファーに隠されています。
表面的なプロットとして捉えれば、物語当時の悟空の境遇が重なります。セルゲームで地球を救うために命を落とし、界王星(あの世)で穏やかに暮らしていた悟空は、まさに「頭の上に天使の輪を浮かべた存在」でした。雲の上からチチや悟飯、成長したトランクスたちを見守り、地球へ「愛の種」を撒き散らしていた情景と重なります。
しかし、森雪之丞氏が紡いだ詩情の真骨頂は、特定のアニメキャラクターの描写にとどまらない「普遍的な人間心理への問いかけ」にあります。歌詞の後半では「悪魔が散らかしていった罠」「壊れかけた地球」といったシビアな現実が提示され、傷つきながら生きる人間の姿が描かれます。つまり、ここで歌われる「僕たち」とは、悟空たちZ戦士だけでなく、テレビの前にいる私たち視聴者自身を指しているのです。
幼少期には誰もが汚れのない無垢な心(=天使)を持っていたにもかかわらず、成長するにつれてエゴや競争、社会の荒波に揉まれ、その清らかさを失ってしまう。それでもなお、心の奥底には「かつて天使だった記憶」が刻まれているはずだという原体験への回帰。過去形を用いることで、「失われた純粋さ」を強烈に対比させ、傷ついた現代人の魂を優しく全肯定する構造が完成しているのです。