日本の最近の殺人事件と動機を徹底検証|治安統計と判決の深層
SNSやネット掲示板上では、凶悪事件が1件発生するたびに「日本の治安は完全に崩壊した」「夜道を歩くこともできない」といった過激な言説が飛び交います。しかし、こうした言説には情報バイアスに基づく大きな誤解が含まれています。
第一の誤解は、「殺人事件が増加している」という錯覚です。前述の通り、昭和30年代には年間3,000件を超えていた殺人認知件数は、平成から令和にかけて3分の1以下に激減しています。それにもかかわらず「増えた」と感じる最大の理由は、ネットメディアの速報性や、防犯カメラ・ドライブレコーダーの生々しい映像がSNSのアルゴリズムによって何度も反復拡散され、利用者の感情を刺激し続ける情報環境にあります。
第二の誤解は、「殺人犯は街頭の不審者ばかりである」という思い込みです。現実の事件発生場所マップを詳細に分析すると、事件の過半数は「被害者または加害者の自宅(屋内)」で起きています。真に警戒し、社会として予防策を講じるべきは、見知らぬ通り魔以上に「孤立した家庭内のトラブル」「密室でのDVや虐待」「孤立無援の介護環境」です。外的な防犯対策だけでなく、内的な孤立の解消こそが最大の殺人抑止力であるという事実は、ネット上の議論で見落とされがちな盲点と言えます。