六甲山サイレンスリゾートの現在は?休業の真相と再開見通しを徹底追跡
プレオープン当初は、修復された歴史的空間で楽しめるカフェやランチ、空のダイニングで提供される地産地消のバーベキューなどが好評を博し、神戸・阪神間の情報通の間で大きな話題となりました。それにもかかわらず、なぜ全面休業へと至ったのか。取材と事業環境の分析から、3つの構造的要因が浮かび上がってきます。
第1の要因は、世界的な建築資材・エネルギーコストの急騰です。再生計画の核を担うのは、プリツカー賞受賞建築家である坂茂の建築デザインによる本格的な木造宿泊棟やヴィラ群の新築でした。坂氏が得意とする環境調和型の高度な木造グリッド構造は、綿密なエンジニアリングと上質な資材を要します。2020年以降のウッドショックおよび急激なインフレは、当初見込んでいた建設総予算を大幅に押し上げ、収支計画の根本的な練り直しを余儀なくさせました。
第2の要因は、プレオープン業態における収益構造のミスマッチです。カフェやレストランのみを先行稼働させたものの、六甲山頂という立地上、平日と休日の集客格差が極めて大きく、冬季の集客落ち込みも顕著でした。宿泊を伴わない飲食単体での黒字化は容易ではなく、宿泊施設が完成していない段階での先行営業継続が、かえって運営コストを圧迫していた事実が見て取れます。
第3の要因は、ラグジュアリー市場のターゲティング再編です。八光自動車工業が本来目指していたのは、国内外のエグゼクティブが数日〜数週間にわたり滞在する「ウェルネス&サイレンス」のプライベートリゾートでした。中途半端な形で一般観光客を受け入れ続けるよりも、一度ゲートを閉ざし、宿泊棟の施工とランドスケープ全体の完全統合に集中する道を選択したと分析できます。