中村歌右衛門の現在と襲名真相|成駒屋の家系図から読み解く後継問題
インターネット上の掲示板やSNSでは、長期にわたる延期を受けて「中村歌右衛門の襲名は事実上消滅したのではないか」「権利関係で揉めて別の家に名跡が移るのではないか」といった根拠のない憶測が散見されます。しかし、興行・梨園の内情をつぶさに検証すると、これらは明白な誤解であることが分かります。
第一に、歌右衛門という名跡の権利は成駒屋一門および松竹が厳格に管理しており、他の一門へ流出することはあり得ません。梅玉・魁春という重鎮が厳然と目を光らせており、一門の結束は極めて強固です。
第二に、「襲名が消滅した」のではなく、「最も相応しいタイミングを慎重に見極めている」というのが歌舞伎界の一致した見解です。歌右衛門ほどの超大名跡となると、3か月あるいは半年以上にも及ぶロングランの襲名披露興行が打たれ、主役は昼夜にわたり大役を勤め上げなければなりません。現在の福助の体調を考慮すると、身体的負荷が過大であることは明白であり、無理な強行は役者の生命線そのものを脅かしかねません。
したがって、現在の延期状態は「立ち消え」ではなく、役者の健康状態と芸の成熟を第一に配慮した「誠実な保留」と解釈するのが、歌舞伎界の常識に照らし合わせた正確な実態です。