聖地厚別の現在と改修の真相|Jリーグ基準と老朽化が迫る決断の時
厚別公園競技場が直面している最大のハードルは、公益社団法人日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)が定める「Jリーグスタジアム基準」です。J1ライセンスを維持・行使するためには、単にピッチと座席があればよいわけではなく、極めて細かなインフラ要件が義務付けられています。
具体的には、観客席の1/3以上(あるいは全席)を覆う屋根の設置推奨・義務化、1,500ルクス以上の照度を確保できる照明設備、一定水準以上の洋式トイレ数、ドーピング検査室や記者会見室、VIPラウンジ、冷暖房完備のロッカールームといった諸室要件が存在します。札幌市厚別公園競技場はメインスタンド中央部の一部にしか屋根がなく、諸室の配置や衛生設備も昭和後期の設計思想のまま留まっています。
ファンの間では「全面改修やドーム化、あるいはサッカースタジアムへの建て替えはできないのか」という待望論が定期的に巻き起こります。しかし、札幌市が直面する財政状況やインフラ更新の全体像を冷静に見据える必要があります。札幌市コールセンター(011-222-4894)等を通じて公表されている市の基本計画や公共施設等総合管理計画において、既存の大型ハコモノをゼロから建て替えるハードルは年々高くなっています。
冬季五輪招致の白紙撤回以降、札幌市における公共投資の優先順位は、市民の生命線である道路・橋梁の補修や、急速に進む少子高齢化に対応した医療・福祉施策へとシフトしています。数百億円規模の市費を投じて厚別を最新鋭のJ1対応サッカースタジアムへと建て替えるシナリオは極めて非現実的であり、市の基本路線は「大規模建て替え」ではなく「既存施設を補修しながら延命させる長寿命化改修」に絞られています。