銚子電鉄の「まずい棒」は本当にまずい?経営危機を救った真相を徹底解説
銚子電鉄の歴史は、幾度となく訪れた廃線の危機との戦いそのものでした。1990年代以降のモータリゼーションの進行や沿線人口の減少により、本業である鉄道事業の赤字は慢性化。かつて2006年には、ウェブサイト上で「電車修理代を稼がなくちゃ、いけないんです」と悲痛な叫びを上げ、名物「ぬれ煎餅」の購入を呼びかけたことで奇跡的な復活を遂げたエピソードは全国的に知られています。しかし、鉄道施設の老朽化に伴う維持費や安全対策コストは年々重くのしかかり、2010年代半ばには再び車両の法定検査費用すら捻出が危ぶまれる極限状態に追い込まれていました。
この危機的状況を打破すべく立ち上がったのが、公認会計士・税理士の肩書を持ちながら代表取締役社長に就任した竹本勝紀社長です。竹本社長は「ぬれ煎餅の売上だけに頼る一本足打法では限界がある。鉄道を走らせ続けるためには、なりふり構わず話題を作らねばならない」と決意。そこで持ち上がったのが、銚電の人気企画「お化け屋敷電車」の演出を手掛けていた怪談蒐集家・寺井広樹氏による「まずい棒」の企画でした。
「経営状況がマズい」という自虐を前面に押し出したネーミングは、社内でも当初は賛否両論を呼びました。しかし、「もはや失うものは何もない」という不退転の覚悟のもと開発は加速。パッケージのメインキャラクターには、寺井氏の仲介により世界的ホラー漫画家である日野日出志氏を起用しました。日野氏は銚電の窮状に深く共鳴し、「銚電を救えるなら」と快諾。自らの代表作を彷彿とさせるホラーテイストと愛嬌を併せ持ったキャラクター「まずえもん(魔図衛門)」を描き下ろしたのです。設定上、まずえもんは「安銚(あんちょう)18年9月31日生まれの異星人で、災いを福に変える力を持つ」とされ、銚子電鉄は実際に9月31日を「まずい棒の日」として日本記念日協会に申請し正式受理されるという前代未聞の展開を見せました。
プロモーションにおいても常識破りの戦略が展開されました。奇才脚本家・浦沢義雄氏が手掛けた公式PV「経営会議篇〜まずい棒の儀」や「切符売りの少女篇」を公開し、参加者全員で「まずい…もう一本!」と叫んで乾杯するお披露目イベントを開催。伝説の青汁CMのフレーズをオマージュしたこの合言葉は瞬く間にSNSで拡散され、2018年8月3日(破産の日=ハチミツの日)のプレ発売以来、初回生産分が即日完売する驚異的なロケットスタートを記録したのです。