又吉直樹『火花』結末の真相と芥川賞の理由!賛否分かれる評価を徹底解剖
本作が巻き起こした社会現象の熱量は、文芸界の歴史を塗り替えるものでした。掲載された『文學界』2015年2月号は異例の増刷を重ね、単行本発売からわずか数か月で芥川賞を受賞。文春文庫版の刊行後もロングセラーを続け、小説火花の累計発行部数は300万部を超える金字塔を打ち立てました。
なぜ現役のお笑い芸人が書いた純文学が、これほどまでに高く評価されたのか。芥川賞選考委員会における選評を検証すると、単なるタレントの知名度に対する下駄履きではなく、作品そのものの圧倒的な筆力が評価されたことが浮き彫りになります。
選考委員を務めた川上弘美氏は「登場人物の造形の確かさと、生きることの根源的な切なさが描かれている」と評し、山田詠美氏も「文章のリズムと独自の視点が際立っている」と言及しました。又吉直樹は長年、太宰治をはじめとする近代文学を深く読み込んできた読書家として知られていましたが、その血肉となった教養が奇をてらわない正統派の文体として見事に結実したのです。
芸人の生態を描いた特殊な業界小説にとどまらず、「何者かになりたいと渇望しながら、何者にもなれなかった若者の普遍的な魂の軌跡」を描き切った点こそが、芥川賞受賞の決定的な理由と言えます。